結婚相談所物語

お母さんへ 前編

初めは、冗談じゃないと思った。だってそうでしょ、お母さん。


いくら一人暮らしを認めてもらう代わりに


結婚相談所に入会すると約束したからと言って、まさか本気だとは思っていなかったもの。


それが本当に連れて行かされるなんて。


仏頂面のお嬢さんと思われたってなんだって、嫌なものは嫌。


まだまだ自由に恋愛したかったし、


ましてや紹介された人と結婚なんてまっぴらだったわ。


彼とお見合いしたのはたまたま。


一応お母さんとの約束だったし、偶然同じ高校の先輩だったから。


でも初めて一緒に映画観たときは思わず居眠りしてしまった。


何となくうちの弟達と一緒に居るのと同じ感覚だったんだもの。


思いっきり寝てたねと彼にも笑われた。


そう、彼はよく笑う、それは気に入ったわ。


でもとにかくお母さんの言う「結婚」て、まだよくわからなかった。


彼も親の勧めで入会したんですって。


お互い自分から進んで結婚を希望して、という感じじゃなかったから、


その点はすごく気が合ったと思う。


でもやっぱり結婚前提というのではなく、あくまでも自由な気持ちで会っていたつもり。


だから結婚相談所にも何の報告もしなかったし、する必要なんかないと思っていた。


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法律事務所勤務(女性・25才)