結婚相談所物語

ドクターの学生結婚

「医学部を卒業したばかりの息子のことで...」

相談に来られたのは彼のお母様でした。


将来を嘱望されている青年医師が臨床を離れ学問追求の場に戻りました。

一般サラリーマンの家庭に育った彼は、その優秀な才能を医者として活かす道に進みました。

しかし、人の命を預かることは想像以上の責任と体力を要します。

息子が日々仕事に没頭する姿に触れ、心身共に支えてくれる人が必要と強く感じ、じっくり時間をかけて息子の医学に携わる心意気を理解してくれる人を探したい、そう考えての来訪でした。


「代々受け継がれてきた病院があるわけではありません。あるのは医学にかける情熱だけ」そう強調されるお気持ちもわかります。

とかく医者と結婚したがる人がいます。

一方で、医者との縁組を看板に掲げる業者がいます。

結婚に何を求め、何を助長しているのかは言わずもがなですが、自分はちっとも釣り合っていないばかりか、医学の道に心血注ぐ生活を共に歩む覚悟などまったく備わっていない人も多いのです。

せがんでお見合いしたものの、何だか服のセンスがいまいち...なんて平気で言う女性は、一体お医者さんをどの様に心得ているのでしょうか?

そんな風潮を危惧されて、お母様は何はともあれ賢明な理解者であること、という条件を掲げられたのでした。


案の定、優秀な若い医者ということでお見合いの申し込みは殺到しました。

でも、早くからの結婚活動というチャンスを与えられている彼は、焦る必要はありません。

じっくりとお見合いを重ねていき、そして、もう一度大学に戻る決心をした頃、その決意を真剣に受け止めてくれる女性に巡り会ったのです。


彼女は、やはり一代で開業された医者の娘でした。

幼い日より父を見てきた彼女は、彼が今から立ち向かおうとすることの大変さ、しかしそれを貫こうとする彼の決意を、よく理解できたのです。

何よりも、尊敬する父が彼を大変気に入ったことも背中を後押ししました。

彼は、可愛らしい理解者のみならず、思いがけずその道の大先輩の応援も得て、学生生活を始めることになったのです。

薬剤師のキャリアを持つ彼女は、研究に打ち込む彼を精神的にも経済的にも支えていくことでしょう。


一途に医学と実生活を両立したいと願い巡り合ったお嫁さん。

無心のなせる技か、後で知ることになったのですが、彼女のお父様は開業どころか病院をいくつも持っていらっしゃるのだとか。

彼のこれからの学究の成果として腕を振るう環境も最高の形で整ったようですね。

糟糠の妻を得て、医療の世界で私たちに希望を与えてくれるような活躍をされることを願っています。


計らずも学生結婚となったドクター。何はともあれ頑張って!そしてお幸せに。




マリッジ・コンサルタント 山名 友子