結婚相談所物語

注文漬けの嫁探し 前編

「稀に見るケースです」


医者がカルテを見ながら眉をひそめて語った、わけではない。


「ずっとここで続けてきたのが良かったのでしょうか」


患者が快方に向かう喜びを噛みしめながら語った、


わけでもない。


実は恥ずかしながら私、


10歳以上年下の女性と結婚することになりました。


不惑を過ぎ、


中年と呼ばれる年齢になって臆面もなく言わせてもらえば、


ここ数年でこんなに一所懸命になれる人はいなかった。


デートの計画を立てることにも喜びを感じる。


ああそんな彼女と出会えてつくづく幸せだ。




振り返れば注文付け放題の嫁探しだった。


もとはと言えば母が勝手に結婚相談所に登録したのだが、


まだ青年とも言えたその頃は


嫁ぐらい自分の好みで決めてやる、


と意気がった。


若くて可愛い、これが第一条件だ。


あれはイヤこれはイヤそれがいいと我を張った。


うまくいかなければ萎(しお)れて、


諦めモードに入りプイと活動をさぼる。


いやまったく、自分でも随分な会員だったと思う。


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マリッジ・コンサルタント 山名 友子