結婚相談所物語

賢母良縁、愚母疎縁 前編

初めにお断りしておきましょう。


賢母と愚母、その冠についた賢と愚は、


一見善きもの悪しきものとに


すっぱり分かれるように思われますが、


実はこれ、全く紙一重の違いでしかないのです。


けれど今という時点が


過去の瞬間の積み重ねである以上、


時々の僅かな差異が


現実の結果を


大きくかけ離れたものにしてしまうのも道理ですから、


この紙一重の違いこそ侮れないと言えるでしょう。


そして注目すべきは"母"ということ。


そう、母の影響は大きいのです。


ほんの一言の言葉であったとしても。




「あたし、なんだか気持ちが冷めちゃった。


彼の振る舞いが


随分いけないことのように思えて。


彼ったらさっさとエレベーターに乗りこんで


ボタンも押してもくれないから、


扉が閉まったのよ、


ってお母さんに言ったら、


あらやだ、


気が利かないわねぇと顔をしかめるんですもの。


そう言われると、


ああそうか、


彼は気が利かないんだ、


そしてそれはいけないことなんだ、


と思えて気持ちにストップがかかっちゃった。


やっぱりお母さんにそう言われると、


ねぇ。」


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マリッジ・コンサルタント 山名 友子