「ショーケースに並ぶ24種類のジャム。
色とりどり味わい色々のジャムの瓶。
一方のショーケースは6種類。
たった6色のジャムの瓶。
さあ、どちらのショーケースの方がよく売れるでしょう?」
こんな質問をされたのはいつだっけ。
それは忘れたけど、
たくさん種類がある方に決まっているじゃない?
と答えたことは覚えている。
でもその人はちょっと笑って、
それが違うのよ、そうじゃないのよ、
人間選択肢が多すぎると選ぶ意欲をなくしちゃうのよねぇ、と言った。
ふ~ん、そんなものか、とその時は訝しく思った。
絶対に結婚する、と決めていた。
だから早々に婚活を始めた。
たくさん出会えばきっと本命にぶつかると思った。
多くの人と、しかも気軽に会いたかった。
ネットで婚活サイトはすぐに見つかった。
さあ、たくさん出会っていい人を選ぶぞ、そう思うとわくわくした。
それから一年・・・。
若かったせいか望み通りたくさん出会えた。
その数、実に50余人。
そして・・・疲れきった。
色々な人と様々な話題。
私がちっとも自分の中に居ない。
空虚。
どんな人にでも合わせられる技だけは身についた気がする。
だけど、そのことがまた自分自身を情けなくさせていく。
私は一体何をしているの?
この人と付き合ってみようと思った矢先にあの人が現れる。
せっかくだからと約束する。
いいのよ、私は真剣、悪いことじゃない、
一生のことだもの当たり前じゃない、と自分を納得させる。
だけど逆に自分もそうやって選り好みされているのかと思うと、
酷く落ち込む。
勝手。
私の好みじゃないと思っても、
ひょっとしたら自分でも気づいていない私がいてその私が彼を選ぶかも、
と言い聞かせて約束する。
貪欲。
結局自分自身を信じていないのだ。
愕然とした。
そんな時、ジャムの瓶が頭に浮かんだ。
確かにそうだ。どうでもいい人にあげるなら、
たくさんの種類の中から選ぶのも単純に楽しい。
だけど自分のため、
大切な人に贈るためなら、
たくさんの種類は要らない。
邪魔なだけ。
丁寧に作られた、厳選されたものだけでいい。
だってどうせ選ぶものは決まってるんだもの。
自分が食べたいと思うジャム、
好みのジャムを、私はきっと知っている。
結婚に対してまで後ろ向きにならなかったのはラッキーだった。
私はこれまでとは全く違う、
一人一人きちんとじっくりお付き合いする出会いを求めることにした。
量より質。
それにはまず、自分自身と向き合わなければならない。
正直に。
それにしても、そうやって出会った一人目の彼が
一生を共にする運命の人になろうとは!
ちょっと歳が離れているけど、
自分が求める一つ一つを辿って行き着いた結果だ。
偶然とも言えるし必然だったのかもしれない。
何れにせよ大したことではない。
お互いに、取り繕わない自分をそのまま素直に曝け出してお付き合いできたことが、
一番大切だったような気がする。
ショーケースに並ぶジャムの瓶。
たった一つのジャムを選ぶには、
材料を見て味を想像して全体を吟味する充分な時間と、
自分の好みに対する直感を信じることが大切。
そして選択の余地が程々であることがもっと大切。
彼との生活。二人の生活。
これからも選択肢はシンプルでいきたい。
絶対シンプルにいこう。
私と彼の感性を信じて。
※選択肢過多効果とは、選択肢が増えるほど選択する事が困難になり、迷う原因となる事を言います。
脳が同時に処理できる情報には限界があり、許容量を超えると選択意欲そのものが低下してしまうことを言います。
マリッジ・コンサルタント 山名 友子