結婚相談所物語

人生最高の10年間

サロンには毎日実に様々な方が来られます。プロフィールの閲覧やお見合いに来られる会員さん、相談に訪れる親御さん、嬉しい報告に立ち寄ってくれるお二人さん、そろそろ結婚をとの思いでサロンの見学に来られる親子連れ、そしてかつて会員でいらっしゃった方。


2年ほど前のことです。70歳くらいの方がサロンに来られました。少し足が不自由なご様子ですがとても品の良いご婦人です。大きな紙袋にはアルバムが数冊入っています。お話を伺うと10年程前にこちらでご結婚された方。ああそうそう、お話が進むにつれて私の記憶も甦ってきました。


当時ご婦人は60歳少し前だったと思います。離婚され、以来パートで生計を立ててこられたのですが、この年齢になり、年金も無い状況に急に先の生活が不安になったと仰っていました。女手ひとつでお子さんを育て生活を必死で守っている間は、ご自分の老後ということにまで考えが及ばなかったのでしょう。


60歳とはいえまだ先は長いです。つつましくも安心して生活できるお相手を望まれての入会でした。とても魅力的なご婦人でしたので、奥様と死別された役所勤めの同年輩の男性とすぐに意気投合、めでたく入籍されました。


それはそれは幸せな結婚生活だったそうです。持ってこられたアルバムを1枚1枚めくりながら目を細めて話してくださいました。


お互いに尊重しあい、ゆっくりと穏やかな時間を過ごせた人生でも最高の10年間でした、病が主人の命を奪うまで、と。それでも遺族年金もあるし何よりもこの10年間の素晴らしい思い出があるので、この先何の不安も寂しさも無い、と晴れやかな笑顔を見せてくださったのが印象的でした。


実はご婦人がサロンに来られた目的は他にもうひとつ。娘さんの結婚のお世話をして欲しいとのことでした。


娘さんも離婚され40歳後半になられているそうです。ご自分の経験から、まだ先の長い人生で素敵な伴侶が見つかるのであれば、との思いでしょう。結局この日に娘さんの入会手続きも済まされ、またアルバムを大事そうに持って帰られました。


さて、親子とは本当に遺伝子の成せる技か、摩訶不思議。娘さんが意気投合したお相手もやはり奥様を死別された役所勤めの男性でした。今ではお母様と同じように幸せな結婚生活を送られています。


娘さんの幸せなご様子をご覧になり、ご自身のことと重ね合わせつつ、お母様もきっと人生最高の思い出の中で穏やかに生きていかれることでしょう。


サロンに来てくださる方々のどのような幸せに触れさせていただけるのか、今日も楽しみにしております。大阪の新しいサロンへも、また多くの方がお運びくださいますよう、そして多くの幸せに触れさせていただけますよう、心よりお待ちしております。


マリッジ・コンサルタント 山名 友子